2014年度の世帯平均貯蓄額 1800万円のカラクリ

2014年度の世帯平均貯蓄額 1800万円のカラクリ

今回は、世帯平均貯蓄額 1800万円のカラクリについて書いてみたいと思います。

さて、表題の件、金融広報中央委員会が行った「家計の金融行動に関する世論調査2014年」によれば、1世帯(2人以上)あたりの貯蓄額の平均は、1,753万円だそうです。

総務省統計局発表の2014年家計調査報告の結果でも、1世帯(2人以上)あたりの貯蓄額の平均は、1,798万円と発表されていますので平均1,800万円弱という貯蓄額はほぼ正確な数値とみていいと思います。

貯蓄額の定義

まず、貯蓄額の定義ですが、資産額とは異なります。

貯蓄額とは、銀行預金や定期預金、生命保険や株、投資信託などの有価証券などの金融資産の合計額で、土地や建物などの資産は含まれません。

それにしては多いと思いませんか?

まあ、このサイトに訪れる方はアーリーリタイアされてる方、また検討されている方も少なくないと思いますのでそれなりの貯蓄がある方が多いと思うのですが、私の場合、あのままずっとサラリーマンを続けていたら、とても貯蓄できている金額ではないと思うのが率直な感想です。

そこで、世帯平均貯蓄額 1800万円という中味がどういうものなのかちょっと気になって調べてみました。

よく調べてみると、これにはいくつかカラクリがあるようです。

2014年度の世帯平均貯蓄額 1800万円のカラクリ

金融資産がある人だけが平均値算出の対象?

金融広報中央委員会が行った「家計の金融行動に関する世論調査2014年」によれば、貯蓄額の平均1,753万円は、金融資産を保有する人のみで算出した平均値だということのようです。

金融資産を保有しない人(貯蓄が無い人)30.4%を入れると、貯蓄額の平均は、1,182万円とされています。

つまり、貯蓄額の平均1,753万円は、金融資産を保有しない人(貯蓄が無い人)30.4%は計算に入れていないということです。何を求めているかよく理解できません。

資料からは読み取れませんでしたが、総務省統計局発表の2014年家計調査報告による貯蓄平均額も1,798万円ですので、金融資産を保有する人のみで算出した平均値だと推測します(?)

負債は別にある

一方で、負債(借入金)の状況も調査報告があります。

負債とは、主に土地・建物や車などのローンのことです。簡単に言えばお金を借りている状態ですので、貯蓄額から差し引かなければしっくりいきません。

極端な話、貯蓄のない人が銀行などから3,000万円借りて銀行に預金すれば貯蓄額は3,000万円ということになります。

ただ、家のローンなどは家が資産になりますので、負債という計算から除外すると考えもあってもいいと思います。

そういう意味では、正確には負債はその内容によって個別に考えるしかありません。

借入額(負債)の状況

借入額のある世帯の割合は、40.7%。負債(借入金)のない世帯も含む全世帯での1世帯(2人以上)あたりの負債額の平均は、519万円となっています。

そして、負債(借入金)のある世帯のみの借入金の平均額は1,338万円となっています。

このうち住宅ローンが1,294万円とその殆んどを占めます。

これらのことから、純資産に該当する金額は、貯蓄額の平均から負債額の平均を差し引いて、

平均では、貯蓄額の1,182万円 ー 負債額519万円 = 663万円となります。

あくまでも平均値ですが、金額が凄く減って身近な数値となってきたと思います。

総務省統計局発表の2014年家計調査報告の結果によれば、40歳から49歳までの平均では、負債額が貯蓄額を上回っているのに対して、60歳から69歳までの平均では、貯蓄額が負債を大きく上回っています。

年代が上がるにつれて、貯蓄の額は増加し、負債の額は減少しています。

世帯平均貯蓄額のカラクリ

負債額が隠れている

例えば30代で3,500万円の家を購入するという一般的なモデルケースで考えてみると、1,000万円の貯蓄から500万円の頭金を支払って残りの3,000万円をローン(負債)に組むといったことが考えられますが、世帯平均貯蓄額の計算には手元に残った500万円しか反映されていません。

でも実態は500万円の貯蓄があっても3,000万円の負債が残っている状態です。

勿論、購入した家は資産となりますので、完全な引き算で考えるのもおかしな話ですが、家は原価償却されますので、上記のモデルケースのような例と自分とを比較するとなると負債額を計算に入れなければしっくりこないのも事実です。

あくまでも平均値

貯蓄額の平均1,182万円はあくまでも平均値です。

10人のうち、100万円貯蓄している人が9人いても1人が1億円貯蓄していれば、10人の貯蓄平均額は1,000万を超えてしまいます。

貯蓄額の平均額もここまで極端ではなくても多額の貯蓄を持っている人で平均値が引き上げられている傾向があるようです。勿論、世代間格差もあります。

このような平均値の欠点を補うために中央値という概念が取り入れられています。

中央値とは、調査対象世帯を保有額の少ない順または多い順に並べたとき、中位に位置する世帯の金融資産保有額のことで、より実感に近い数値になります。

ちなみに金融広報中央委員会が行った調査によれば、全世帯の中央値は、

金融資産は、400万円(金融資産保有世帯では1,000万円)

借入金額は、500万円(借入金のある世帯では1,000万円)

という平均値とはかけ離れた結果が出ています。

これは50代の中央値平均とほぼ同じです。

つまり、50歳前後の人(世帯)で400万円前後の貯蓄があれば人並みということが言えると思います(負債は考慮しない場合)。

どうでしょうか。随分と身近な数字になってきたのではないでしょうか。

2人以上の世帯に限定

調査は2人以上の世帯に限定されています。

つまり一人暮らしの貯蓄額(負債額)は計算に入っていません

同じく金融広報中央委員会が行った2014年の単身世帯調査によれば、一人暮らし全体の平均貯蓄額は774万円、金融資産を保有しない人(貯蓄が無い人)が38.9%とされています。そして、中央値は75万円とされています。

実に平均値と中央地で10倍違った金額になっていますね。

ちなみに、単身世帯のうち金融資産保有世帯の金融資産保有額は、平均値が1,268 万円で中央値は、500万円となっています。

一方、負債(借入金)のない世帯も含む全世帯での負債額の平均は、93万円となっています(借入金のある世帯のみの借入額の平均は461万円)。

つまり、独り暮らしの人(世帯)は、2人以上の世帯と比較すると平均貯蓄額も中央値も、また負債額も低く、全体の世帯の平均値を下げてしまいますので、単身世帯を加えた全世帯の貯蓄平均額はさらに下がってしまいます。

まとめ

このように平均貯蓄額1,800万円という調査結果は特定の条件や前提のもと算出されたものであり、いきなり、自分(世帯)と比較する数値としては不適切なことがわかります。

世帯貯蓄額のカラクリには騙されないようにしなければなりませんね。

余計な不安を抱かないためにも、こういった数値に惑わされず、あくまでも自分が生きていくためにはいくらの貯蓄が必要か、必要でないか、を自分で考えることが必要だと思います。

こんな数字が表に出ると、国民は余計お金を使わずに貯蓄に回しかねません。

アーリーリタイアする時も、いくらの資産(貯金)があればできるか、という議論がなされますが、これも同じことが言えます。

参考:アーリーリタイアするために必要な資金の計算方法

参考:55歳でアーリーリタイアするのに必要な資金はいくらか?

※参考
・金融広報中央委員会の
「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)平成26年調査結果」
「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査) 平成26年調査結果」
・総務省統計局発表の2014年家計調査報告(貯蓄・負債編)