近年、ネットや書店の雑誌などで、「老後の資金は3,000万円必要」といった記事を見かけます。
この3,000万円という数字は、一般的に、退職後、年金だけでは不足する金額の合計額だと考えられていますが、人それぞれの環境によって大きく違ってくる訳ですからこの数字をそのまま自分に当てはめる訳にはいきません。
インフレ目標を2%に設定しておきながら、今の物価水準で計算された金額ですし、年金の支給額も少子高齢化で減少してくることが予想されるので、20代、30代の若者にも向けて発した金額であれば無責任とも言えます。
この矛盾にみんな何となく気づいていると思うのですが、そこに切り込んで数字を出したものを見かけたことがないのは私だけではないと思います。
老後資金が3,000万円必要というのは絵に書いた餅
老後資金3,000万円の根拠
老後資金3,000万円の根拠をネットで調べてみました。
するとおよそ以下のようなモデルで算出されているのがわかりました。
<モデルケース>
- 定年退職年齢:60歳(老後の定義年齢)
- 年金支給開始年齢:65歳
- 夫婦二人の世帯
- 生活費:月額25万円
- 年金収入:月額20万円
- 平均寿命:88歳
つまり、老後という定義の年齢が60歳で、月の生活費が25万円、公的年金収入が20万円ほどある夫婦二人の世帯で、夫が88歳まで生きた場合であることが前提となっています。
その結果、
・60歳から88歳までの生活費:25万円×336ヶ月=8,400万円
・65歳から88歳までの年金収入:20万円×276ヶ月=5,520万円
で、不足分は、8,400万円 - 5,520万円で2,880万円(約3,000万円)になるという訳です。
20年後の3,000万円は?
例えば、現在の年齢を40歳と仮定した場合、老後(20年後)の3,000万円はどれくらいの価値があるのでしょうか。
インフレ率を目標値の2%と仮定すると、ざっくりですが、物価は40%ほど上がり、生活費は単純計算で25万円から35万円近くになっています。
実際は物価の上昇が家計に影響しないものもありますのでもう少し小さい数字になると思いますが、数字は大きく変わってしまいます。
これに対して年金支給額はマクロ経済スライド制で思うように上がりません。
※マクロ経済スライド:年金額を物価や賃金の伸びより低く抑えられる仕組み
仮に年金支給額に変動がないとして上記のモデルケースにあてはめると、単純に生活費が10万円上がった分336ヶ月で新たに3,360万円、合計6,240万円不足することになります。
仮にインフレ率が1%でも同じく合計額は、4,560万円不足してきます。
この計算は、物価の上昇(インフレ)が60歳でストップした場合の計算です。
インフレがそれ以降も続くのであればもっと悲惨な数字になります。
また、仮に定年が65歳、70歳にシフトしても年金支給開始年齢は70歳、75歳にシフトし、平均寿命も延びていると思われるのであまり変わらないと思われます。
まとめ
そんなことを考えると、老後の資金として3,000万円必要という話は、10年後、20年後、人によってはもっと先の話なので、絵に書いた餅ではないかと思うのです。
とはいえ、不足することは間違いなく、その時に向けて準備が必要ですので、何かしら目安となる数字を出すことには意義があることかもしれません。
行動喚起にもなります。
私たちは、少しづつインフレが進むリスクを覚悟して、もう少し余裕のある資金を用意しておくべき、副業や投資などを検討してみる必要があります。
参考:
参考:55歳でアーリーリタイアした場合は資金はいくら必要か?
参考:公的年金だけで不足するお金は投資など自助努力で準備しなさいというけれど
⇒ セミリタイア生活